「善悪」の概念について、生真面目な人ならば一度は考えたことがあるだろう。生真面目な人ほど、善く生きようと考え、妙に頭の回る人ほど「善」の定義を考え、哲学的沼にハマっていくものだ。

かくいう私もその一人で、前回の記事にもある通り「善悪」について何度も考える。

物余りの現代において、物を破壊する存在は善か悪か
 
記事内では時事ネタとして台風を例に取り上げたが、他にも善悪について考える場面は多数ある。

相手が嫌がっているのに物を与えることは善か?
健康を害する美味しい食べ物(高カロリー)は悪か?
高齢化社会・資源の足りない世界で延命治療を施すことは善か?

一方から見た善が必ずしも善とは限らない例は、考えればきりがない。

こうした善悪論は、古今東西ある(俗に言うおせっかいというやつ)が、それにしても現代はこうした悩みが特に多いように思う。

かつては、長く生きることは「絶対善」であり、治療を施すことによる悪影響など考えたこともなかったはずだ。食べ物についても、作れば作るほど重宝される「絶対善」であり、現代のような「飽食」と揶揄されることもなかったはずだ。

なぜ、現代において善悪の悩みが増えたのか。


人間の限界・地球の限界

思うに、ものや人が増えすぎたせいで、人間の限界・地球の限界に向き合わなければいけないときが来ているのだ。

人間の限界とは、簡単に言えば食べる量や消費量の限界のことだ。

例えばダイエットに悩む人なら、もっと体が大きければ食べ物をいくら食べても(勧められても)問題ないはず。大体の場合体が大きいほど基礎代謝量は増えるので、摂取カロリーより消費カロリーが上になる。

ダイエットの本質は「低カロリー食(断食)」「空腹を紛らわすこと」にあり

また、ちょっと非現実的な話になるが、目が6つあったり手が6つあれば、いまや一人では消費しきれない娯楽をもっと楽しめるはずだ。ゲームをしながらピアノを弾きつつパソコンでプログラミングをする…なんて夢のような技もできるだろう。

もっと言うと、不老不死になれば「時間」という最も大きな制約を気にすることなく、学習や娯楽に時間を費やせる。

人間が貧弱故にいろいろと限界や制約があるから、取捨選択を考えてあれこれと悩むことになる。


一方、地球の限界というと、もはや身近な話題である地球温暖化や資源枯渇だ。

ちょっとまえ大きな話題となった機械学習(いわゆるAI・人工知能)も、高性能・大規模になればなるほど消費電力が増大するという指摘があり、単純に大きくすることが人類のためにはならないと言われている。

「世界の消費電力量の10%がAIになる日」はやってくるか?

機械学習に限らず、いまや大量生産をしすぎて資源枯渇やゴミ処理が大きな問題となっている。人口爆発による消費量増大も懸念点である。

地球温暖化を考えると不用意に消費エネルギーの大きい開発はできない。資源枯渇やゴミ処理を考えると、無駄なものを作ることも極力避けるべきだ。

こうした「なにをするべきか、なにをすべきでないか」を考えることが、冒頭の善悪の悩みにつながってくる。



ゲノム編集・宇宙開発で限界を超えられるか?

人間・地球の限界に対応する方法がある。

ゲノム編集で人間の限界、宇宙開発で地球の限界を突破することだ(厳密には、宇宙開発で地球以外から資源を見つけること)。

ゲノム編集(ゲノム解析)に関する技術発達はめざましく、3万円ほどで一般人も遺伝子解析ができるとのこと(某Vtuberがやっていた)。その遺伝子解析では、身長や体重・寿命まで判断できる。すなわち、どの遺伝子がどの部分に作用するのかわかっているということだ。

これを逆に応用すれば、遺伝子を操作して人間の形を変えること(ゲノム制御)ができるのもそう遠くない話に思える。実際、マウスなどの動物実験においていくつかの成功例がすでにある。

もちろん、1つの遺伝子がどの部分にまで強く作用するか精密に解析する必要があるし、そもそも人間の形を変えることが道徳倫理的にどうなのかという問題もある。

ゲノム編集の倫理的検討概要 - 京都大学大学院文学研究科


もう1つの限界突破が宇宙開発。

「宇宙ビジネス」と呼ばれるビジネスが台頭しつつあり、時代の風雲児・堀江貴文氏もちょっと前に民間初のロケット発射に成功した。

詳しく知らないので説明は省くが、もしも遠くの星の資源を手軽に得ることができれば、人類にとって大きな一歩になるかもしれない。

ただ、現在のペースから考えると少し長い話になりそうなのが難点。最近の技術発達のペースは早いから、その波に宇宙開発も乗ってくれることを祈るしかない。




結局の所、人間や地球の限界を超える手立てはあるものの、実現までにかかる時間は長そう。

それまで、善悪に対して私達ができるのは、限界から目を背け、「ある特定の期間」にとっての善を目指すほかないように思う。

「ある特定の期間における善」について書くのは、また後日。
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